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サッカーの歴史や人物について

坂本龍一さん 死去

〈2023年4月3日の記事〉

 

世界に知られた音楽家

世界的な音楽家で「教授」のあだ名でも知られた坂本龍一さんが、3月28日に亡くなったことが2日に伝えられた。死因は明らかにされていないが、ここ半年はステージ4の癌による壮絶な闘病生活を送っていたとのこと。享年71歳。

坂本さんは14年に中咽頭がんと診断されたあと、一時休養しての治療で寛解。だが20年には直腸癌と診断され、「余命半年」と告げられた。手術は現発巣と肝臓2ヶ所、移転したリンパの腫瘍、さらに大腸を30㎝も切除。両肺に移転したがんを摘出するなど、1年で6回の手術を受けた。その後は通院して投薬治療を行なっていた。

そんな状況下でも昨年12月には事前収録したピアノコンサートを全世界へ配信するなど、衰弱しながらも最期まで音楽へ情熱を注いでいたという。

 
転機となった『戦場のメリークリスマス

1952年1月生まれの東京都中野区出身。3歳でピアノを始めてクラシック音楽に親しみ、東京芸術大学作曲科を経て78年に高橋幸宏さん、細野晴臣さんの3人で『イエロー・マジック・オーケストラYMO)』を結成。シンセサイザーを使った「テクノポップ」と呼ばれる斬新な音楽が国内外で評判を呼び、世界ツアーも成功させた。

YMO解散後は個人としても積極的に活動し、初めて映画に関わった『戦場のメリークリスマス』(83年、大島渚監督)が転機となった。ヨノイ大尉役の候補に挙がっていた三浦友和沢田研二滝田栄らと日程調整などで折り合わず、配役が難航。そこで白羽の矢を立てられたのが、坂本龍一さんである。

坂本さんはこのオファーを「音楽を任せて貰えるなら出演します」との条件で承諾。デヴィッド・ボーイ、ビートたけしらと共演したこの作品は、カンヌ国際映画祭でお披露目。パルムドールは逃したものの、坂本さんが手がけた音楽は英国アカデミー賞の作曲賞を受賞。主題歌の『Merry Christmas Mr. Lawrence』は今なおピアノで弾き継がれるスタンダード曲となった。

 

世界で活躍

『戦メリ』お披露目の映画際で訪れたカンヌで紹介されたのが、イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督。坂本さんはベルトルッチ監督に請われて、『ラストエンペラー』(87年)の甘粕正彦大尉役で出演。撮影半年後に音楽の依頼を受け、2週間ほどで45曲を書き上げた。

ラストエンペラー』は第60回米アカデミー賞の作品賞、監督賞など9部門を独占。坂本さんも映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネ(『アンタッチャブル』の音楽でノミネート)らを退け、日本人初となるオリジナル作曲賞を受賞。またグラミー賞の映画音楽賞も獲得している。

ベルトルッチ監督とは計3作品でタッグを組み、『シェリタリングスカイ』(90年)ではゴールデングローブ賞の映画音楽賞などを受賞。その他にも『バベル』『レヴェナント 蘇りし者』(A・G・イニャリトウ監督)といった話題作の音楽を担当。最近も是枝裕和監督の新作『怪物』にピアノ曲2曲を提供するなど、音楽家としての終生をまっとうした。