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鬼才オーソン・ウェルズ 神童の限界

 

神童の虚像

21歳にして演劇界で注目を集めると、23歳の時にはラジオドラマ『宇宙戦争』で世間を騒がせ、26歳で映画史に残る傑作『市民ケーン』を撮ってしまった神童オーソン・ウェルズ。常識に囚われない自由な発想と大胆さがウェルズのウェルズたるゆえんだが、天才にありがちな気まぐれさと尊大さで、キャリアの後半生はその才能を生かし切れなかったという印象だ。

 

監督としては長編処女作の『市民ケーン』がピークとなり、俳優としては31歳の時に演じた『第三の男』のハリー・ライムを超える役を演じることはついになかった。ウェルズは歴史に残る二つの名作の呪縛から逃れることが出来なかったのだ。

 

おそらくある年代の人たちにとってのオーソン・ウェルズとは、英会話の教材で低音ボイスを響かせる名物ナレーター、もしくはウイスキーのコマーシャルで圧倒的なオーラを放つ怪優、というイメージしかないはず。かつて神童と称えられたウェルズだが、晩年はその虚像だけが大きくなってしまった言えるだろう。

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