
「カルト映画の帝王」
映画『エレファント・マン』『ブルー・ベルベット』、TVドラマシリーズ『ツイン・ピークス』などの作品で知られる監督・制作者のデイヴィッド・リンチさんが、1月15日に亡くなったことが家族のSNSより伝えられた。
死因は明らかにされていないが、昨年に長年の喫煙による肺気腫を患っていると公表。酸素吸入なしでは歩けない状態だったという。78歳没。
リンチ監督は異形なものや不気味な世界観を扱った独特の作風で知られ、「カルトの帝王」「シュールレアリズムの巨匠」とも呼ばれた。
1946年1月20日生まれのモンタナ州ミズーラ出身。父親が農務省の技術官だった関係で、幼少期より一家は各地を転々。バージニア州の高校を卒業後、画家を目指してボストン美術館附属学校に入学するも、1年後に中退してオーストリアへ留学。だが環境の違いからホームシックにかかり、わずか15日滞在しただけで帰国してしまう。
帰国後はペンシルベニア美術アカデミーに通い、そこで作った短編アニメーションが評価され、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)の奨学金を受けて34分の中編『ゴッドマザー』を監督する。
70年にはロサンゼルスに移り、AFIの協力を得て初の長編ホラー映画『イレイザーヘッド』を4年かけて自主制作。作品はシュールな内容でマニアの評判を呼び、カルト的人気を博した。
80年には『イレイザーヘッド』を評価したメル・ブルックスに抜擢され、『エレファント・マン』を監督。19世紀に実在した奇形病の男と医師との交流を描いた映画は、感動のヒューマンドラマとして日本でもヒットを記録した。。米アカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされ、一躍その名を知られる。
失敗作からの復活
そのあと人気SF『スターウォーズ/ジェダイの復讐』の演出依頼を断り、大河SF『デューン/砂の惑星』(84年)を監督。しかし完成に3年半をかけた意欲作は、長大な内容をまとめきれず興行的・評価的にも失敗し、リンチ監督は私生活でも離婚を経験するなど大きなダメージを受けてしまう。
それでもそこからの再起を図り、86年には低予算のサイコ・スリラー『ブルー・ベルベット』を発表。デニス・ホッパーら個性派俳優が織りなす妖しく刺激的な映像は全米にセンセーションを起こし、アカデミー賞の監督賞にノミネート。「カルトの帝王」としての本領を発揮し、みごと名声の回復を果たした。
90年はロードムービー『ワイルド・アット・ハート』を監督。暴力に満ちながらも独特の雰囲気を帯びた作品は大いに評価され、カンヌ国際映画祭のパルムドールという栄誉を授かる。
またこの頃からテレビ界にも進出。捜査ミステリーのドラマシリーズ『ツイン・ピークス』(90~91年)は型破りなストーリーで視聴者の関心を集め、世界中で大ブームを巻き起こした。
2019年にはアカデミー賞の名誉賞を受賞。2022年にはスティーブン・スピルバーグ監督の半自伝映画『フェイブルマンズ』に俳優として出演し、ハリウッドの伝説的巨匠ジョン・フォード監督を貫禄たっぷりに演じている。