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サッカーの歴史や人物について

「裏切り者」と呼ばれた男 エリア・カザン

 

ハリウッドの「嫌われ者」

映画監督あるいは舞台演出で知られる、社会派の巨匠エリア・カザン監督。舞台演出家としてピューリッツァー賞トニー賞を受賞。映画監督としても数々の名作を生み出し、アカデミー賞を始め多くの映画賞に輝いた。

 

また、劇団時代の仲間と俳優養成学校「アクターズ・スタジオ」を設立。後に加わったリー・ストラスバーグとともに「メソッド演技」の指導を行ない、マーロン・ブランドジェームズ・ディーンポール・ニューマンダスティン・ホフマンアル・パチーノロバート・デ・ニーロらの名優を輩出している。

 

そんな華々しい経歴を誇る名監督だが、一方ではハリウッドの「裏切り者」として、晩年まで批判の声が絶えなかった映画人でもある。1940年代後半から50年代初め、ハリウッドでは“赤狩り”旋風が吹き荒れていた。その突風を受け、進歩派と見られていたカザンは転向。仲間を共産主義者として認める証言を行ない、身の保全を図ったのである。

 

そのあとも数々の名作を世に送り出したカザン監督。映画界への長年の功績に対し、米映画アカデミー協会から98年に「名誉賞」が与えられることになった。授賞式当日、オスカー像を受け取るカザンに、慣例として会場からスタンディング・オベーションが贈られる。だがカメラは、椅子に座ったまま無表情の、エド・ハリスニック・ノルティイアン・マッケランらの姿も捉えていた。

 

リチャード・ドレイファスは授賞式前に、「カザンは賞賛を受けるべき人物ではない」との主張を展開。会場の外には「裏切り者」「密告者」のプラカードを掲げ、シュプレヒコールを叫ぶ反対派の姿もあった。

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