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サッカーの歴史や人物について

ワールドカップの歴史 第17回日韓大会-後編(2002年)

「両雄対決」

 

 

疑惑のジャッジ

初めてWカップの決勝トーナメントに進んだ開催国の日本だが、1回戦でトルコに0-1と敗れて終戦。その試合の2時間後、もう一つのホスト国、韓国がイタリアを太田テジョンの競技場に迎えた1回戦が行なわれた。

韓国は3トップの攻撃的布陣で臨み、立ち上がりから速攻を仕掛けてイタリアを撹乱。開始4分、右サイドから韓国のFKが蹴られると、薛琦鉉ソル ギヒョンがゴール前で転倒、主審の笛が吹かれた。ゲームを裁くエクアドル人、バイロン・モレノのジャッジはPK。シャツを引っ張ったイタリアDFのプレーが、反則とされたのだ。

キッカーは安貞桓アン ジョンファン。だがそのシュートはブッフォンの好セーブに止められ、韓国はチャンスを逃してしまった。ここからペースを取り戻したイタリアは反撃を開始。18分、左CKのチャンスでトッティが鋭いボールを入れると、ヴィエリがヘディングで先制点を決めた。

1点を先制すれば、もはや堅守を誇るイタリアの流れ。守備を固めてのカウンターで韓国ゴールを脅かす。しかし韓国が諦めずに運動量で攻め続けると、イタリアは61分、デル・ピエロに代えてガットゥーゾを投入。逃げ切りにかかった。

しかしカウンターのリスクが減ったと見た韓国のヒディンク監督は、中盤の選手を下げてFW黄善洪ファン ソンフォンと李天秀イ チョンスを立て続けに投入。攻撃の枚数を増やしてイタリアにプレッシャーをかける。さらに83分、チームの要・洪明甫ホン ミョンボに代えて車チャドゥリを入れ、最後の勝負に出た。

次第に押し込まれるイタリア。終了直前の88分、黄善洪の浮き球パスをパヌッチがクリアミス。そこから薛琦鉉の同点ゴールが生まれた。試合は延長に突入、95分にはイタリアのトンマージがネットを揺らしたが、これはオフサイドとして得点は認められなかった。

103分、トッティが競り合いからPエリアで倒され笛が鳴る。イタリアのPKかと思われたが、モレノ主審の判定はシミュレーション。トッティは2枚目の警告で退場となってしまった。数的優位となった韓国。117分に李栄杓イ ヨンピョがクロスを入れると、安貞桓が頭で合わせゴールデンゴール。試合に決着を付けた。

こうして韓国はイタリアを延長サドンデスの2-1と破り、準々決勝へ進む。しかしこの試合は、偏ったジャッジがなされたとして物議を醸す。そして後日、FIFAは誤審を認め、主審モレノは国際審判の資格を剥奪されることになった。

 

 

ホスト国 韓国の勢い

続いて韓国が準決勝で戦ったのが、1-1延長のPK戦で難敵アイルランドを退けたスペインだった。スペインはエースのラウルがアイルランド戦の負傷で欠場となり、ワントップのモリエンテスが孤立。攻撃は機能しなかった。

しかしタックルで脚を痛めたボランチ金南一キムナミルが32分に交代すると、そこから流れはスペインに傾いた。この日ホアキンが絶好調。ドリブルで何度もDFを切り裂き、韓国ゴールを脅かす。後半に入った48分、セットプレーからバラハが頭でネットを揺らすが、マーカーのシャツを掴んだのがファールとされ、ゴールは取り消されてしまった。

終盤には両チーム攻撃の選手を投入して勝負に出るも、得点は生まれることなく試合は延長戦に突入。その延長前半の92分、ホアキンがDFをかわしゴールライン際でクロス。モリエンテスが頭で決めたかに思えたが、ラインを割っていたとして副審の旗が上がった。

試合は延長120分を終わって0-0。セミファイナルを懸ける勝負はPK戦にもつれ込む。これを想定していた韓国は準備万端、前日は入念にPKの練習を行なっていた。PK戦では李雲在イ ウンジェがホアキンのゴールを止めたのに対し、カシージャスは5人目・洪明甫のシュートを防げず、韓国が勝利した。

スペインは2つのゴール取り消しが誤審だとしてFIFAに抗議するが、もちろん試合の結果は変わらなかった。こうして韓国は、誰も予想しなかったアジア勢初のベスト4入りを果たすことになった。

 

オリバー・カーンの大奮闘

ドイツは予選G組・最終節のナイジェリア戦が大荒れの試合。主力3人を出場停止で欠きながら、トーナメント1回戦でパラグアイと戦った。注目されたのは、チームを引っ張るカーンとチラベルトの守護神リーダーの顔合わせ。36分と78分にはチラベルトがFKを蹴り、カーンとの直接対決が会場を沸かせた。

接戦となった試合は終了間際の88分、カーンのロングキックが繋がりノイビルがシュート、ドイツが一瞬のチャンスを活かし、1-0と勝負を決めた。

準々決勝はアメリカとの対戦。アメリカは1回戦で2トップのマグブライトとドノバンが活躍、メキシコを2-0と打ち破っていた。ドイツは勢いのあるアメリカの速攻に押され気味になるが、高さのあるクローゼとバラックにボールを合わせチャンスを窺う。そして39分、ツイーゲのFKからバラックが頭でゴール。ドイツが先制した。

後半、攻勢を強めるアメリカ。受け身となったドイツは再三のピンチを迎えるが、カーンが気迫のセーブで失点を阻止。身体を張ってチームを鼓舞した。こうしてリードを守り切ったドイツが1-0と勝利し、ベスト4勝ち上がりを決める。

 

ドイツ 韓国を破り決勝へ

準決勝はドイツと韓国の戦い。地元の大声援を受ける韓国は、3トップの布陣で早い攻撃を仕掛け、ドイツを揺さぶる作戦に出た。その思惑通り、韓国の速攻はドイツDFを混乱させる。開始8分、右サイドに空いた大きなスペースから車ドゥリがクロス、李天秀が決定的なシュートを放つも、カーンが素早い反応でボールを弾いた。

韓国の攻撃に慣れてきたドイツは守備を修正、次第に流れを引き寄せる。そしてハイボールを多用し、持ち前の高さで反撃。相手ゴールへ迫った。

後半さらに攻め続けたドイツだが、71分に一瞬の隙からボールを奪われ、李天秀のドリブル突破を許してしまう。このピンチをバラックがファールで阻止するも、累積2枚目の警告を受けてしまい、次戦には出られなくなってしまった。

試合は0-0のまま終盤を迎えるが、激戦続きの韓国は次第に疲労の色を見せ始める。75分、李栄杓パスミス。ボールを奪ったドイツはカウンターを開始した。ノイビルが右サイドを突破し、折り返しのクロスをバラックがシュート。1度はGKに弾かれるが、こぼれ球をバラックがゴールへ押し込んだ。

80分、追いつきたいヒディンク洪明甫に替えFWの薛琦鉉を投入。最後の勝負へ出た。しかしカーンの牙城は崩せず、0-1の結果。韓国の快進撃も終わりを迎えた。

こうして3大会ぶりの決勝へ進むことになったドイツだが、クローゼとともに攻撃を牽引していたバラックを、大事な一戦で欠くことになってしまった。

 

トルコの快挙

予選グループでサプライズを起こしたセネガルは、「死の組」を1位で勝ち上がったスウェーデンと1回戦で対戦。開始11分、ラーションがFKを頭で合わせ、スウェーデンが先制。だが37分、ディウフの落としからアンリ・カマラがゴールを決め、セネガルが同点とした。

試合は1-1で延長に突入。スベンソンの決定的なシュートがポストに嫌われた直後の105分、セネガルが速攻で反撃。カマラがゴールデンゴールを叩き込み、試合を決めた。

そして準々決勝は、ともに台風の目となったセネガルとトルコとの試合。トルコは再三の決定機を迎えるが、エースのハカン・シュキュルが大ブレーキ。得点機を逃していた。

67分、トルコは不調のシュキュルに代えてイルハンを投入。スコアレスの延長に入った94分、右サイドでボールを拾ったウミト・ダバラが中央へクロス。イルハンがダイレクトシュートを放ち、トルコのゴールデンゴールが決まる。こうしてトルコは、初の準決勝進出という快挙を果たした。

 

ブラジルとイングランドの熱戦

ブラジルは1回戦、リバウドロナウドのゴールでベルギーを2-0と撃破。準々決勝へ勝ち上がった。またイングランドデンマークとの1回戦、オーウェンのゴールなどで3-0と快勝、準々決勝に進む。

ベッカムは2アシストでチームを引っ張ったが、ここまで庇っていた足の痛みが悪化する。ベッカムは2ヶ月前の試合で左中足骨を骨折、懸命の治療とリハビリでWカップに間に合わせていたのだ。

そしてブラジルとイングランドの対戦。開始直後はブラジルのペースで進むも、23分にオーウェンが頭脳的な動き。DFルッシオの裏をかいてからのシュートで、先制点を決めた。しかし前半終了直前、中盤でボールを奪ったロナウジーニョがドリブルを開始。DFに囲まれるも、シザーズでかわしリバウドへ軽快なパス。ブラジルの同点弾が生まれた。

さらに50分、ゴール右サイド30mの距離から、ロナウジーニョがゴール左上隅を狙ってFKを蹴る。前方へのクロスを警戒していたGKシーマンは、虚を突かれ対応ミス、逆転ゴールを許してしまった。その7分後、ゴール前の競り合いでロナウジーニョが相手の足を踏みレッドカード。ゲームの主役が退場となってしまった。

1人少なくなったブラジルだが、そこからは守備に集中。70分、ロナウドに代えエジウソンを投入。数的不利をエジウソンの運動量でカバーすると、ブラジルはリードを守り切り2-1と勝利を収めた。

 

大会初 欧州と南米の両雄対決へ

準決勝は、予選C組でも戦ったブラジルとトルコ再度の顔合わせ。注目のロナウドは「大五郎カット」で登場した。この試合、トルコGKリュストウが獅子奮迅の働き、ブラジルのシュートをことごとく防ぐ。

こうして前半を0-0で折り返した50分、久々のチャンスで前掛かりになったトルコの隙を突き、GKマルコスが左サイドのジウベルト・シルバにフィード。そこから前線のロナウドにパスが繋がる。

ロナウドはトルコDFの間を縫いながらドリブル。そのままのリズムで、右足つま先によるシュートを放つ。タイミングを外されたリュストウは、慌てて飛びつくも届かず、ボールはネットを揺らした。62分、トルコは切り札のイルハンを投入、反撃に掛かる。しかしブラジルは得意のボールキープで時間を使い、トルコを焦らせた。

こうして試合は1-0で終了。ブラジルはトルコの勢いを止め、3大会連続となる決勝に進んだ。

これまでWカップ4回の優勝と、2回の準優勝を誇るサッカー王国ブラジル、そして優勝3回、準優勝3回のサッカー大国ドイツ。この両雄が大会で初めて、しかも決勝戦という大舞台で対戦することになった。

3位決定戦、韓国とトルコの試合は大邱スタジアムで行なわれた。多くの観客が詰めかけ自国のチームに声援が送られるが、開始11秒に韓国のミスからハカン・シュキュルが先制点を挙げる。その後もイルハンが2得点、2点を返した韓国に追い上げられるが、3-2と逃げ切ってトルコが勝利を収めた。

 

決戦 横浜競技場の夜

第17回ワールドカップ日韓大会の決勝は、6月30日の20時、横浜国際総合競技場に6万9千29人の観客を集めて行なわれた。主審を務めるのは、イングランド対アルゼンチン戦、日本対トルコ戦でも笛を吹いたイタリア人のピエルルイジ・コッリーナ。スキンヘッドでもお馴染みの名審判である。

ここまで16得点の攻撃力を誇るブラジルと、オリバー・カーンを中心に1失点の固い守備で勝ち上がったドイツとの戦い。ドイツはブラジルの “3R” を徹底マーク、序盤は主導権を握った。だが個人技で徐々に押し返すブラジル。ロナウドがゴールに迫るが、カーンも必死のセービングで対抗する。

ドイツが2度の決定機を逃した後半の51分、カーンはブラジルのヘディングシュートを防ぐも、ジウベルト・シルバと衝突。右手薬指の靱帯を痛めてしまった。すると前半目立たなかったリバウドが、後半には積極的に攻撃参加。ブラジルのペースとなった。

67分、ロナウドのパスからリバウドが強烈なミドルシュート。すると鉄壁の守備を誇るカーンがキャッチミス、詰めていたロナウドが先制点を押し込んだ。やはり指の負傷が、カーンの牙城に影響を与えてしまったのだ。

さらに79分、カフーの囮の動きでドイツDFに綻びが生じる。クレベルソンがクロスを入れると、それをリバウドがスルー。ロナウドが中央でフリーとなり、追加点を叩き込んだ。その後、猛然と攻撃を仕掛けるドイツ。しかし王国のサッカーの前に、かつて何度も演じたような奇跡は起こらなかった。

こうしてドイツの反撃を抑えたブラジルが2-0の勝利。2大会ぶり5度目の優勝を勝ち取った。終了のホイッスルが鳴ると、喜びを爆発させピッチで跳びはねるセレソンたち。一方ドイツゴールには、ポストに背中をもたれ、いつまでも動かないカーンの姿があった。

得点王は8ゴールで前回の雪辱を果たしたロナウドが獲得、大会MVPにはカーンが選ばれた。

 

rincyu.hateblo.jp

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